仙台高等裁判所 昭和26年(う)151号 判決
原判決は司法巡査吉田吉郎作成の検証調書を証処に挙示しているが同巡査の此検証が刑事訴訟法第二百十八条、第二百十九条等所定の裁判官の発した令状に依つたものかどうかを諒知し得る資料の記録上存在しないことは、寔に所論の通りである。しかしながら、右の検証が刑事訴訟法第二百十八条の規定によるものであるか否かは記録上明かでないが、仮りにそうだとしても、同条の規定による検証についての令状は、その検証調書の証拠調の際必ず之を提出すべしとか、その他一件記録中に必ず編綴すべしとの規定なく、又その令状の存在を当該検証調書中に表示しておかなければならない旨の規定もない。従つて、右の令状が記録中に存在しないこと、又は当該検証調書中にその存在の表示がなされていないからといつて、右検証が令状なくしてなされた違法なものでその調書は証拠となし得ざるものであると速断することを得ない。却て、原審第一回公判調書によれば、同公判期日において、原審検察官が右検証調書の証拠調を請求した際、原審弁護人は直ちに之を証拠とすることに同意し、かつその証拠調に異議がない旨を答えていることが明かであるが、弁護人は検察官が証拠調の請求をする証拠書類及び証拠物については予じめ之を閲覧する権利あることに鑑みれば、原審弁護人は右同意に先立つて予じめ、閲覧すること等によつて、それが刑事訴訟法第二百十八条の規定に基ずく検証の調書であるならば、裁判官の令状の存否等をも確めた上右の同意をしたものであるものと推定するのを相当とする。けだし弁護人として、右のような令状もない不適法な検証の調書を証拠とすることに同意したものとは考えられないからである。果して然らば、前記検証調書が刑事訴訟法第二百十八条の規定による検証調書であるとすれば、その検証についての裁判官の令状は存在したものと推認するを相当とし、従つて原審が之を証拠としたことにつき所論のような違法の廉ありとは認められない。論旨は理由がない。